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【第1部第2章21節】Crisis Chronicles
2023/7/31
雨上がりの多湿な大気が周囲一帯を容赦無く満たし、自然環境特有の褪せた芳香が息衝く生物の呼吸に乗せて、鼻腔から肺の内部を侵食する。 周辺には際限無く変形した木々が歪(いびつ)に繁茂し、その間隙を拭っ ...
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【第1部第2章20節】Crisis Chronicles
2023/7/28
白銀の外装を持つ自律機動型レクティア〈Kα-LINKS-47〉の回転羽が装甲上部に黒色の円形影を描きながら荒々しく大気との摩擦音を奏でる。 現在、オートパイロットシステムにより制御された〈Kα-L ...
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【第1部第2章19節】Crisis Chronicles
2023/7/26
――――――――――清澄な旋律が聴こえる。 一定の冷たさを含み、しかし瑞(みず)のように心の中へと深く浸透してくるような透き通った歌声。 その音色は形容し難いほどに美しく精錬され、楽器の恩恵を得 ...
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【第1部第2章18節】Crisis Chronicles
2023/7/24
――――――――これより、依頼(ミッション)の説明を行います。 今回、ギルド『GunSlinger-ガンスリンガー-』の皆様に完遂して戴くのは、或る魔導機器の搬送任務です。 では先ず、後の説明に ...
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【第1部第2章17節】Crisis Chronicles
2023/7/22
ギルド統括機関「フィンガム」第三都市支部―――クラッドビル。 豪奢な高層ビルの玄関口に据えられた自動ドアを前で、二人の少女は歩みを止めた。 見上げた黒塗りの構造物は天高く聳(そび)え立ち、あくま ...
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【第1部第2章16節】Crisis Chronicles
2023/7/20
今後の計画をすり合わせながら、二人は短い朝食を摂った。 UADバングルには、友人達から心配の意を含んだ通知が送られて来ていた。 一応、事の詳細を知らされていない友人達には「クレイズが霊体に障られ ...
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【第1部第2章15節】Crisis Chronicles
2023/7/13
「クレイズ!朝よ!起きなさ~い!」 「――――――――。…………ふぇ!?な、なにっ!?」 閉じられたドアを大仰に開け放ち、一切の遠慮無く、内部の静寂を持ち前の大声で追い払ったのは本来のこの部屋の ...
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【第1部第2章14節】Crisis Chronicles
2023/7/11
カチリ、カチリ、カチリ―――――――――――――― 「ウフフ……フフフフ…………」 闇の中、確かにソレは歪に嗤(わら)っていた。何が可笑しいのか、それは定かではない。だが、ソレは確実に現状進行し ...
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【第1部第2章13節】Crisis Chronicles
2023/7/10
今となっては既に遥か昔、嘗て多くの人々が共に馳せた夢の残滓の腕(かいな)に抱(いだ)かれ、導電性強化パネルにより円形に切り取られた肥沃の大地。その中心点にソレは悠然と腰を据えていた。 嘗(かつ)て ...
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【第1部第2章12節】Crisis Chronicles
2023/7/5
その夜、クレイズは涼風に長髪を靡かせながら、ビルの窓辺から眼下の景色を眺めていた。 眠らない街―――と呼ぶには賑わいが少ないが、遠方に散在する街灯の光が夜の寂しさを軽減させている。 時刻は深夜零 ...