また会うかもね。もしかしたら。雨が降ったら―。
こんにちは、クロンです!
心に残った本を紹介させていただきますので、よろしくお願いいたします。
本日紹介する書籍は、「言の葉の庭 著者:新海 誠」
【本の紹介】
この本を一言で表現するなら、「喪失」です。
梅雨入り前の時期、靴職人を目指す孝雄は将来への不安からか、学校生活をサボるようになってた。
普段なら誰もいないはずの、寂れた日本庭園の休憩所。
雨の日にはいつも、そこで独り、物思いにふけることが日課となっていた。
自分の将来と、折り合いをつけるために。
内省を繰り返し、迷いながら思考を巡らせる日々。
夢を諦めるべきか、追い求めるべきか。
だがそんなある日、その休憩所に先客を見つける。
一人の女性。
その若い成人女性は、明らかにこれから出勤するという出で立ちにも関わらず、缶ビールやコーヒーを片手にベンチに腰を預けていた。
髪色は黒でショートヘア。細身だがスタイルの良い体形からは、真面目そうで薄幸な印象を受ける。
だが凡庸な周囲景観とは裏腹に、その端正な顔立ちは見る物を虜にする求心力を宿していた。
―――ふと、その女性と目が合う。
それが主人公達の出会いだった。
最初に交わした言の葉は、記憶にさえ残らない、他愛のない他人行儀なものだった。
それから次節は梅雨へと移り、雨の日には決まって、二人は同じベンチで無言のまま、同じ時間を共有してゆく。
時折、交わす言葉は二言三言。それでも、少しずつ互いに打ち解け合うには十分だった。
いつしか高校生なりの将来への不安を相談してゆく孝雄。一方で、自分の正体を頑なに明かそうとしない女性(ゆきの)。
それでも、自分の夢について語っても笑わないでいてくれる、ゆきのは、彼にとって初めての心を許せる相手だった。
だがそんな日常も、梅雨明けと共に終わりを告げる。
孝雄が日本庭園を訪れる機会もめっきり少なくなり、代わりに平日は学生生活の割合がその大半を占めてくる。
あの人は今、どんなふうに過ごしているんだろうか――――。
それからふとした転機に、孝雄はゆきのの手掛かりをつかむことになる。
物語はそこから加速度を増していき、孝雄はゆきのの正体に少しずつ気付いてゆく。
一体、ゆきのは何者なのか。
二人の関係性はどのように変化していくのか――――。
【この本との出会い】
私がこの本と出会った切っ掛けは、アニメ映画でした。
新海監督のアニメーションを「秒速5センチメートル」で知り、心を鷲掴みにされたことをよく覚えています。
高校生ながらに衝撃的な展開だったため、数日間は喪失感に打ちのめされていました(笑)。
なのでこの「言の葉の庭」も同じような展開に行きつくのかとハラハラして見ていました。
ネタバレは避けますが、シンプルながらも奥行きと切なさを兼ね備えた、とても好みの作品でした。
そしてそんな大好きな作品だこそ、本でも読んでみたい。
そう思って書籍を購入した次第です!
改めて新海監督の文章表現力には目を見張るものがあり、読むものを引き付ける力があります。
細かく描写された主人公の内面や生活環境は、読者を主人公へと感情移入させ、その後の展開をより鮮やかなものに昇華していきます。
必ず一見の価値ある本となるでしょう。
【まとめ】
おすすめ度:★★★★★
おすすめする人:男子高校生、2~30代の社会人、小説家志望者
映画を見たことがある人でも、小説は一味違った表現と共に新たなエピソードも追加されており、シンプルで切なく、とても満足できる内容となっています。
読み終えたときには、さらに登場人物たちを好きになっていることでしょう。
気になった方は、是非とも手に取ってみてください。
新海監督の文書力や独特な日本語の表現には、目を見張るものがあり、得るものがとても多かったです。
創作活動をしている人には特に、多くを学べる本となっているので、かなりおすすめです!
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!